安藤さんには「どうしてもあなたにお願いしたい」――と、出勤日を確認して予約をされるお客さまがいる。時間がたつのを忘れ、クルマについてお客さまと話し込んでしまうこともある。
「私もクルマが大好きなんです。休日は洗車をして、クルマを見て過ごすのがリフレッシュ。だから愛車を大切にされるお客さまの気持ちはよくわかります。前に、フェアレディZが大好きな年配のお客さまがいらっしゃって。こだわりの愛車は、フェアレディZ Version NISMOでした。整備に関しては、すべて私にまかせると言ってくださったんです。作業を担当しただけでなく、クルマのいろんな話を一緒にさせていただきました。往年の日産車やレーシングカーも好きなので、『昔はこれに乗っていたんだよ』なんて話を聞くと私もうれしくなります」
話ができる機会を多く取って、お客さまとの距離も縮めたいという安藤さん。その理由とは?
「ご要望を聞くのはもちろんなのですが、お話を聞くうちに整備の仕方も変わってくるんです。たとえば、クルマの使用状況は、人それぞれ違います。クルマに乗るペースも毎日なのか、週1回なのか。それによって、部品の傷み方や消耗の仕方も変わります。『あんまり乗られないから、次回で十分』、『1か月の走行距離が長いので、次の点検では間に合わない』など、クルマのコンディションに応じてアドバイスができます。整備のタイミングはクルマを大切に扱う上でとても重要ですから」
修理したクルマをお客さまが笑顔で受け取ってくださったときが最高。そう語る安藤さんは、難解な不具合を専門に修理するチームに1年いた。整備士の中でも選ばれた人間だけが集まる少数精鋭のチームだ。
「一番難解とされるのは、不具合の現象が再現できないものなんです。年に1、2回しか発生しない不具合や、規則性がなく出てくる症状などですね。そういったものは、現象を再現させるところから始めます」
今のクルマは、ほとんどがコンピュータ管理。エンジンやミッション、エアコンや電装関係は、いろいろなコンピュータが通信し合って制御している。そのため、コンピュータに入ってくる信号が一瞬おかしくなってしまうだけで不具合が出てしまう。
「瞬間的に起こる不具合。そこを探すのが難しいんですね。一番時間がかかるところですが、現象が出てしまえば解決は早いです。そのために極力、お預かりした状態から手を加えることなく、どういう状況で不具合が発生したのか、お客さまの話をとことん聞き、同じような条件でテストをして、再現させます」
次々に資格を取得し、難解不具合を解決するチームにも抜擢され、プロの整備士としてのキャリアを積んでいる安藤さん。しかし、「自分の課題はまだたくさんあります」と語る。
「長い間やっていると、自分の経験に頼り過ぎてしまう。先入観をもってしまい、不具合の原因に辿り着けなくなってしまうんです。それだけは避けたい。経験にとらわれて物事の一方だけを見てしまうと、答えが見えなくなるときもあります。どれだけたくさんの可能性を考えられるか。そしてそれを消していけるか。お客さまの話を一言一句もらさず聞くのもそのためです。
どうしても不具合が見当たらないなら、真っ白な状態になり、正常なところから可能性を消していく。最後に残ったところが不具合、という気の遠くなるような見方もしなければならない。ひとつのことに固まらず、常に柔軟でいることが私の課題です」
『お客さまの話に耳を傾けたい』というのは、クルマを修理するだけではない、愛車を大切にしたいという気持ちまでも守ってくれるプロの心意気である。
洗車をするときは、『見えないところを拭く』のがコツです。例えば、バックドアを開けたふちや、ガソリンを入れるところなど。普段は見えないけれど、開けたときに見えるところをキレイにしていると、クルマ全体にきちんと感が出ます。
ほこりが溜まりやすいエンジンルームを拭くのもおすすめ。こまめに拭いて見慣れてくると、整備の知識があまりなくても、クルマの変化に気がつくようになると思います。整備のタイミングがわかりやすくなりますよ。ボンネットを開けるときは、エンジンが冷えきっているときに。
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