「ゾーンボディ」はクラッシャブルゾーンとセーフティゾーンの2つのゾーンにより乗員の安全を確保するという考え方に基づきつくられています。今回は特に側面衝突についてお話ししたいと思います。
クルマの衝突部位別に乗員の致死率(*)が高いのは、自動車の前部、左横部に衝撃を受けた時です。車輌が最初に衝撃を受けた部位別に乗員の致死率を見ると、前部衝突が1.96パーセント、左横部衝突が1.66パーセントと他に比べて高くなっています。ですから前部はもちろん、側面衝突時の乗員の保護というのがとても大切になります。
シートベルトをしている乗員が側面衝突時に傷害を受けるパターンは、車体内部(車体側部およびドア)との2次衝突と車両外物との2次衝突の2つに大別できます。この2つの2次衝突か
ら乗員を守るためには、車体の変形を抑えることにより、車体内部での2次衝突を軽減すること、更に車両外物の侵入と乗員の部分的車外放出を防がなくてはなりません。
また2次衝突部分の衝撃吸収性を高めることも必要です。「ゾーンボディ」では、これら側面衝突における現象を詳細に分析し効果的な対策を採用しました。
(*)致死率の定義
致死率=死者数÷死傷者数×100
衝突部位 | 運転中 | 同乗中 | 小計 | 合計 | ||
前席 | 後席 | その他 | ||||
前部 | 2.25 | 1.35 | 1.00 | 1.43 | 1.23 | 1.96 |
後部 | 0.03 | 0.04 | 0.06 | 2.09 | 0.06 | 0.04 |
右横部 | 1.38 | 0.91 | 1.29 | 1.08 | 1.07 | 1.30 |
左横部 | 1.22 | 2.71 | 2.27 | 4.27 | 2.56 | 1.66 |
右斜前部 | 1.25 | 0.63 | 0.69 | 0.27 | 0.64 | 1.09 |
左斜前部 | 1.05 | 1.84 | 1.18 | 0.00 | 1.58 | 1.22 |
右斜後部 | 0.22 | 0.05 | 0.66 | 0.00 | 0.28 | 0.24 |
左斜後部 | 0.30 | 0.17 | 0.75 | 4.76 | 0.43 | 0.33 |
天井その他 | 4.45 | 3.01 | 0.46 | 0.47 | 0.91 | 2.01 |
合計 | 0.87 | 0.85 | 0.77 | 1.02 | 0.82 | 0.85 |
注:第3当事者以下が運転する車の同乗者は除く。 |
衝突部位 | 大 破 | 中 破 | 小 破 | 損傷なし | 合 計 | |
前部 | 7.76 | 0.77 | 0.15 | 0.26 | 1.96 | |
後部 | 1.37 | 0.04 | 0.00 | 0.13 | 0.04 | |
右横部 | 9.21 | 0.53 | 0.03 | 1.45 | 1.30 | |
左横部 | 9.70 | 0.77 | 0.04 | 0.94 | 1.66 | |
右斜前部 | 6.35 | 0.38 | 0.06 | 0.00 | 1.09 | |
左斜前部 | 6.45 | 0.64 | 0.05 | 0.00 | 1.22 | |
右斜後部 | 3.12 | 0.10 | 0.04 | 1.35 | 0.24 | |
左斜後部 | 5.28 | 0.19 | 0.00 | 1.03 | 0.33 | |
天井その他 | 10.00 | 2.60 | 2.03 | 0.63 | 2.01 | |
合計 | 7.00 | 0.49 | 0.04 | 0.38 | 0.86 | |
注:第3当事者以下が運転する車の同乗者は除く。 |
(平成8年版トラフィック・グリーンペーパーより) |
「ゾーンボディ」では、側面衝突時にセーフティゾーン(乗員のいるキャビン部)の強度を大幅に上げるため、シートクロスメンバー、セカンドクロスメンバー、ステアリングメンバー、ルーフレールなど車両の左右をつなぐ構造部材を補強し、更にAピラー、Bピラー、シル、サイドルーフレールなどのボディサイド部に補強材を最適に配置しました。そしてまた、ドア内のウエストレインフォース、サイドドアビーム、サイドルーフレール、シル等の車両の前後をつなぐ部材の補強やリアドアの侵入防止対策構造により、部分的に入った衝撃を車輌側部全体に分散する衝撃分散ボディサイド構造を採用しました。さらに、ピラーやドアなどの2次衝突部位の衝撃吸収対策として、厚みのあるドアとピラーのトリムを採用、またドア内は堅いものを乗員から遠ざけるために機構部品のレイアウトを工夫し、2次衝突時の衝撃を緩和しエネルギーを吸収する構造にしています。