苦難の末に生まれた、キューブの個性。”非対称デザイン”の誕生秘話
かつての温泉街の風情も残しつつ、行列のできるパン屋や古民家を改装したカフェめぐりなど、新しい魅力が生まれ、人気が再燃している静岡県熱海市。山と海に挟まれた自然豊かな町のタクシー会社、サイトシィーング伊豆の「カエルタクシー」では、キューブをタクシー車両として1台導入しています。2009年にデビューした初代キューブタクシーはオーガニックオリーブ、現在は2代目のアクアミント/ブリリアントホワイトパールの2トーンカラーのタクシーが熱海の町を走っています。地方のタクシーとしてはまだ珍しいトールワゴンの車体を操るのは、タクシードライバー歴4年目の日比奈穂美さん。
「前の色のときから運転していますが、明るいボディカラーになって、白がアクセントに入っているところも好きです。タクシーと一緒に写真を撮ってほしいとリクエストされることもありますよ」
日比さんは熱海生まれの熱海育ち。幼い頃からよく知る熱海の町をめぐるタクシードライバーとして活躍しています。

「入社当時は子供がまだ小さかったので、時間の融通がきくタクシードライバーは私に合っていました。キューブの運転は前任者の方からのバトンタッチだったのですが、自分で希望して乗車しています。キューブは小回りが利くので、狭い道でも運転しやすいですね。利用される方は観光客の方よりも、地元の方が多いです。熱海の町は坂が多いので、少しの距離でもタクシーに乗車されています」
トールワゴンタイプのタクシーは、座席にスーツケースなどの大きい荷物を載せられると、観光客の方からも人気。でも実は、一番多いのが地元の方からのご指名での迎車だといいます。

「“四角いクルマ”をお願いしますとご連絡をいただきます。お年寄りの方などがお買い物の帰りに利用されています。座席スペースも足元も広いので、とくに卵など割れやすいものなどを買われた方は、座席に置いて乗られています」
お買い物といっても、段ボールなどにお米や肉、野菜などをぎっしり詰めてのまとめ買い。道幅が狭い場所も多く、土地の高低差もある熱海の町の生活では、タクシーは高齢者の方にとっての生活手段。一般的なタクシーに比べて3人並んで乗っても真ん中の人が窮屈にならないので、ゆったり乗れると好評だそうです。降車や荷物の積み下ろしのお手伝いの際も腰をかがめないでいい高さのおかげで比較的楽にできるとか。

「お宅まで荷物を運ぶのを手伝ったときに『カエルさんに乗ってよかった』と言っていただくときにとてもやりがいを感じます」と日比さんは教えてくれました。
お客様のご自宅や温泉宿への移動以外にも、熱海城や神社めぐりなど観光地にお客様を運ぶことも多い日比さん。熱海で育ち、働く日比さんのおすすめスポットは、四季によって表情を変える熱海城からの景色。

「とくに4月になると熱海城の周囲に桜が咲いて見ごたえがあります。昼も素敵ですが、夜になるとライトアップされるのでまた違っていいですよ。あとはやっぱり夏もお城と海が映える景色がとてもきれいなのでおすすめです」
今後の目標は「熱海のご指名タクシーNo.1になりたい」と大きな笑顔で教えてくれた日比さん。カエルタクシーでは全車のうち、1台のみがキューブ。そのレア感から、見つけたらSNSに投稿する人もいたりと、熱海のラッキーモチーフのようにも思われているようです。もし熱海を訪れたときは、カエルのマークがついたキューブを探してみてはいかがでしょうか。