茨城県常総市。筑波山を望むこの街のとある材木倉庫で、黙々と作業を続けるのが、筑波材木店の筑波浄次だ。居並ぶ材木は、ケヤキ。そのひとつにバンドを通すとクレーンを操作し、何回か持ち上げては材の中心を探る。中心が決まってバランスがとれると高く吊り上げ、他の材木の上へ。木が反らないよう慎重に台木を入れ、積み重ねる。慣れた身のこなしだが、何百キロもの材木を動かす作業は、危険と隣り合わせでもある。
「私の仕事は、材木店としての業務のほぼ全てです。建築会社や工務店、個人のお客様へ材木を販売する中で、要望に合った材を提案したり、見積の作成や現場打ち合わせ、納品にも携わります」と筑波は話す。
筑波材木店は、昭和50年に筑波の祖父が立ち上げた会社だ。筑波も28歳で就職。現在は父が社長を務め、兄や他の社員10数名と共に社を支えている。
「子供の頃からなんとなく材木店をやるんだろうなと思っていたので、仕事は毎日、楽しいです。やはり木の手触りや匂いがしっくりきますね。父のもつ方向性と兄の使命感、その両方がわかる立場なので、ふたりの調整役として動くこともあります」
筑波材木店の特徴は「在庫数日本一」を誇るケヤキの数だ。原木を200本以上、一枚板・無垢材は3000個以上をストックしている。ケヤキは伐採も自社で手がけ、原木の状態で1~2年乾燥させたのち、製材後も倉庫内で乾燥を重ねる。そうすることで、使った際に痩せず、狂いのない品質を保つことができる。それが顧客からの信頼につながっていく。
「ケヤキは硬く腐りにくいので、住宅の大黒柱や鴨居、敷居などに使われます。つやや色などにそれぞれの個性があり、使えば使うほど愛着が増すのも魅力です。また、木目がはっきりしていてきれいなため、店舗のカウンターやテーブル、看板などにも使用されます」
筑波がキャラバンで運ぶのは、そういった繊細な運搬を要する商品だ。雨に濡らせないカウンター板や傷をつけられない看板用の木材などで、「キャラバンは積載量が大きいのに小回りが利き、走りに安定感があるから使っています」と筑波は語る。
筑波材木店がケヤキにこだわり、在庫を大量に揃えているのは、さまざまな注文に応えるため。そして、お客に実際に現物に見てもらいたいからだ。
「木の存在感というのは圧倒的で、実際に見て触れていただければ、『看板にはこれが良い』『この部分を使いたい』などお客様のイメージが湧きやすいんです」
「木の存在感というのは圧倒的で、実際に見て触れていただければ、『看板にはこれが良い』『この部分を使いたい』などお客様のイメージが湧きやすいんです」
とはいえ、郊外の材木店や工務店にとっては受難の時代でもある。多くのハウスメーカーが住宅などの一括注文を受け付けているため、便利さゆえ、施工主がそういった業者に流れてしまうことも少なくない。だからこそ、筑波は模索を続けている。「いまの時代、地域の材木店や工務店は、『価格が安い』『近くにあって便利』だけでは厳しい。『材木が実際に見られること』や『腕の良い大工を紹介できる』など、付加価値をつけて選ばれる業者にならなければ。まだまだやることは山積みです」
そんな筑波にとって、プロフェッショナルな仕事とはどのようなものだろう――。
「お客様の気持ちを考え、要望に近づけるためどれだけ努力できるか、でしょうか。予算、木目、硬さ、色などさまざまなニーズを知ったうえで提案し、納得してもらうこと。そこで妥協しないことだと思います」
「お客様の気持ちを考え、要望に近づけるためどれだけ努力できるか、でしょうか。予算、木目、硬さ、色などさまざまなニーズを知ったうえで提案し、納得してもらうこと。そこで妥協しないことだと思います」
1981年4月10日
(茨城県常総市)
職種:材木販売業
職歴:9年
会社名:株式会社筑波材木店
大きな木材の納品はトラックで行いつつ、サポートとして小回りの効くキャラバンを利用。重量やサイズの異なる材木もらくらく収納できる大容量の荷室はプライベートの子供の習いごとの送迎にも活躍。