イケミズユニットサービスは、東海地方の都市部を中心に、戸建やマンションの水回りに関する設備の取り付け・修繕を生業にしてきた会社だ。従業員は代表の池内を含め、2名。大きな会社ではないが、池内の誠実な人柄と丁寧な仕事ぶりもあって、元請けや顧客からの信頼は厚い。
「一度仕事が始まると、終わるまで食べ物が喉を通らないんです。よく現場の仲間からも、お昼くらい食べなよと言われるのですが……休憩して気が抜けてしまうのがどうしても嫌で」
「一度仕事が始まると、終わるまで食べ物が喉を通らないんです。よく現場の仲間からも、お昼くらい食べなよと言われるのですが……休憩して気が抜けてしまうのがどうしても嫌で」
昼の休憩にも手を休めず、申し訳なさそうにそう話す池内の胸の内には、現場の仕事に就いて28年経った今でも忘れられない出来事がある。
「この仕事を始めて二年目のことでした。初めてコーキング(※1)を打たせてもらったお客様に『これはプロの仕事じゃないね』と言われたことがあります。今思うと、仕事が下手なことが問題とされていたわけではなかった。ただプロとして、その仕事で(納品をしても)いいだろうと思っていた考え方が、致命的にダメだったんです」
(※1)コーキング……建築物において気密や防水を高めるため、隙間を目地材などで充填する作業
「この仕事を始めて二年目のことでした。初めてコーキング(※1)を打たせてもらったお客様に『これはプロの仕事じゃないね』と言われたことがあります。今思うと、仕事が下手なことが問題とされていたわけではなかった。ただプロとして、その仕事で(納品をしても)いいだろうと思っていた考え方が、致命的にダメだったんです」
(※1)コーキング……建築物において気密や防水を高めるため、隙間を目地材などで充填する作業
以来、常に職人としてあるべき姿に思いを馳せながら、立ち止まることなくこの仕事に邁進してきた。
「仕事ぶりを見ていただいている人からは、よく天職だねと言われますが、正直、自分で向いていると思ったことは一度もありません。ただ、向いていないからこそ『いいね』と言ってもらえるように努力してきたし、負けるもんかと思ってここまでやってこれたような気がします」
「仕事ぶりを見ていただいている人からは、よく天職だねと言われますが、正直、自分で向いていると思ったことは一度もありません。ただ、向いていないからこそ『いいね』と言ってもらえるように努力してきたし、負けるもんかと思ってここまでやってこれたような気がします」
設備の取り付けを生業にする前は、自動車の整備士として第一線で働いていた池内。だが、多くの職人がそうであるように、この業界に飛び込んで最初に経験したことは、失敗と挫折の連続だった。
「今だって、辞めたいと思うのが日常ですよ。どんなにキャリアを積んでも、寸法を間違えて切ってしまうとか、簡単なミスで商品をダメにしてしまうこともあります。そんなときは、恥ずかしいやら申し訳ないやらで、また同じことをするんじゃないかと考え始めると、その日一日、道具を触るのが怖くなるほどです」
「今だって、辞めたいと思うのが日常ですよ。どんなにキャリアを積んでも、寸法を間違えて切ってしまうとか、簡単なミスで商品をダメにしてしまうこともあります。そんなときは、恥ずかしいやら申し訳ないやらで、また同じことをするんじゃないかと考え始めると、その日一日、道具を触るのが怖くなるほどです」
池内の、その丁寧すぎるほどの仕事ぶりと高い評判の裏側には、こうした数々の失敗に対する経験の蓄積がある。
「よく失敗も経験のうちと言いますが、大切なのはそれを隠したり、誤魔化したりしないことではないでしょうか。誰にもバレないだろうという発想は、自分に嘘をついていることにもなるし、そもそも、自分が手がけたお風呂場やキッチンを何十年も使っていくお客様の目を欺くことは絶対にできないんです」
「よく失敗も経験のうちと言いますが、大切なのはそれを隠したり、誤魔化したりしないことではないでしょうか。誰にもバレないだろうという発想は、自分に嘘をついていることにもなるし、そもそも、自分が手がけたお風呂場やキッチンを何十年も使っていくお客様の目を欺くことは絶対にできないんです」
工期の差し迫った新築工事の現場では、常に複数の作業が同時に進められていく。そんな中、工程の後半に始められる水回りの設備業者が作業する時間は限られている。スケジュールを厳守しつつ、高い品質を求められる責任の重圧を、池内がどのようなモチベーションで乗り越えているのか尋ねると、意外なほどにシンプルな答えが返ってきた。
「作業の終わりに、お客様に仕上がりを見てもらうんです。そんなとき、僕はいつも『どうです?イメージ通りですか?』と訊ねます。そのときお客様からの『うん、すごくいいね!』という一言がもらえる瞬間だけを想像して、僕は仕事をしているような気がします」
「作業の終わりに、お客様に仕上がりを見てもらうんです。そんなとき、僕はいつも『どうです?イメージ通りですか?』と訊ねます。そのときお客様からの『うん、すごくいいね!』という一言がもらえる瞬間だけを想像して、僕は仕事をしているような気がします」
——— 徹底的に使う人のことだけを考えて仕事に向き合う。そんな池内にとって『プロフェッショナル』な仕事とは何か、最後に聞いてみた。
「旅先で、とあるビジネスホテルに泊まったことがあります。仕事がら、どうしてもお風呂場があるとその仕上がりを見てしまうのですが、当時の私は、それが下手だったとき、なんだ、自分より下手な奴がいるじゃないかとホッとしていたんです。でも、そのホテルのお風呂場は違いました。とにかく仕事が完璧で、その美しい仕上がりに驚きが止まりませんでした。そのとき思ったんです。世の中には、誰にも気づかれないようなところで完璧な仕事をしている人がいるんだって。これこそがプロなんだと思いました。それからは自分も、いつかはそんな仕事ができる日を目指しているんです」
「旅先で、とあるビジネスホテルに泊まったことがあります。仕事がら、どうしてもお風呂場があるとその仕上がりを見てしまうのですが、当時の私は、それが下手だったとき、なんだ、自分より下手な奴がいるじゃないかとホッとしていたんです。でも、そのホテルのお風呂場は違いました。とにかく仕事が完璧で、その美しい仕上がりに驚きが止まりませんでした。そのとき思ったんです。世の中には、誰にも気づかれないようなところで完璧な仕事をしている人がいるんだって。これこそがプロなんだと思いました。それからは自分も、いつかはそんな仕事ができる日を目指しているんです」
1967年02月13日
(熊本県荒尾市)
職種:住宅設備機器施工士
職歴:28年
会社名:イケミズユニットサービス
荷室を作業台として大胆に活用したことで現場での作業効率を飛躍的に高めつつ、運転席では自作のアームレストを設置し、快適さを追求。必要な時に車内でON/OFFの切り替えができる仕様にカスタムしている。