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庄内の深き懐に育まれながら犬と共に生きる
犬訓練士との出会い
犬訓練士との出会い
 氷点下5度を下回る吹雪の中、踏みしめる雪の冷たさがブーツを越えて足の指先に伝わってくる。「ここから先は車を降りて歩いて向かいます」そう告げた訓練士の池田が荷室に積み込んだケージを開けると、2頭の犬が待ちくたびれたと言わんばかりに、まっさらな新雪へ勢いよく飛び出してきた。
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 今回、池田が連れている犬は全部で5頭。中でもこの雪山での遭難救助訓練に参加するのは、警察犬と災害救助犬の両方の試験に合格しているドゥードルという犬種のベルだ。

「この子も、預かったばかりの時はとても臆病だったんです。でも、だんだんと練度の高い訓練をこなしていけるようになって、今では立派な救助犬として活躍しています」

 訓練に入る前に、ベルが大好きなおもちゃで遊んで声を出しやすくする『喉鳴らし』を行いながら、池田が言う。「犬によって、好きな遊びも訓練の仕方もちがうんです。人間と一緒ですよね」
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そもそも池田が犬訓練士という職業を選ぶことになったきっかけは、小学校にまでさかのぼる。「姉が友達から借りてきた警察犬をテーマにした少年漫画を読みまして......それにいたく感動してしまって、絶対に犬訓練士になるんだと決めました」

 高校卒業と同時に訓練所で見習い訓練士の道へ。弱冠23歳にして公認犬訓練士の資格も取得した。今では、山形県警察の嘱託警察犬指導手を務めるほどのベテランだ。

「最近は随分と女性が増えたなあという印象です。意外に思われるかもしれませんが、私より上の世代は、女性が少ない仕事だったんです」
過酷な災害救助現場
過酷な災害救助現場
 どれだけ犬が好きでも、それが仕事である以上、必ずしも楽しい時間ばかりではない。見習い訓練士がまず直面するのが、犬たちの世話の過酷さだ。「朝早くから100頭近くいる犬のケージの掃除に始まって、犬の食事を作ったり......訓練中はなおさらのこと。休みはほとんどあってないようなものでした」

 公認の訓練士になっても、トラブルは尽きない。「人を何人も噛んでいる危険な犬を訓練しなければならないこともあります。必ずしも犬が好きという理由だけでは続けられない仕事かもしれません」
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 実際の救助現場では、さらに過酷さを増す。遭難者を探して何時間も山中を歩き回るだけでなく、車中泊を行うこともある。荷物も、人も、犬も、すべて一台の車の中で過ごす。当然ながら、暖房をつけたまま眠ることはできない。誰もいない雪山で、寝袋一つで救助犬と共に出動までの数日を滞在しなくてはならない。
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 訓練した犬は、要請があればどこへでも出動する。2011年の東北沖地震の際には岩手に、2005年には地元山形で起こった羽越線脱線事故にも池田の訓練した警察犬が出動した。天災が多い日本では、救助犬の要請が年を増すごとに増えているという。
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犬との絆
犬との絆
 訓練士というと、災害救助犬や警察犬のイメージが強いが、一般の飼い主からの預かり犬も多い。自分の犬でなくとも、寝食を共にし、愛情を持って接しているうちに絆が生まれるのを感じるという。

「訓練所で初めてお客様の犬を任された時のことは忘れません。飼い主の方が引き取りに来られた別れ際、その子が車の中から自分のことをじっと見たんです。その目が『どうして一緒に来ないの?』って言っているように思えて......その瞬間、ブワーっと泣いてしまいました」

 以来、犬の気持ちがだんだんとわかるようになった。犬も人間と全く同じ様に怒ったり、拗ねたりすることもある。その時々にどういう心境なのかを感じ取りながら、相応しい訓練を進めていくよう心がけている。

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——— あなたにとって『プロフェッショナル』とはなんですか?

「仕事で周囲を納得させる結果を出し続けること。その繰り返しです」
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1975年09月12日
(山形県飽海郡)

職種:公認犬訓練士

職歴:23年

大型犬用のケージを後部座席と荷室にそれぞれ配し、訓練用の手綱やヘルメットをかける多用途のポールを中央に。汚れやすい床にはビニール製のマットを敷き詰めることで衛生面を向上させている。