マスターテクニシャン File:09

日産マスターテクニシャン一覧へ

若手の技を磨き優秀整備士を生み出すトレーナー 北九州日産モーター株式会社 一田 雄二(いちだ ゆうじ)さん ※2012年3月16日時点での所属です

光るところを伸ばして結果を残す

2011年『全国日産サービス技術大会』で北九州日産モーターの選抜チームは準優勝を勝ち取った。この快挙の裏に有名な鬼トレーナーあり。噂の人、一田さんだ。

「私は自主性にまかせ、その人の持っているいいところを伸ばしていくスタイルです。全国にはスパルタ教育で整備士を強くするところもあるかもしれませんが、私はそういった指導はしていません。昨年の技術大会でチームが2位を獲得し、その教育方針は間違っていなかったと、確信しました。
大事にしているのは、柔軟な考え方です。その人に合わせた教育の方法をいつも探しています。教えている私を超えてもらわないといけないので。私の持っている知識の押し付けでは、私以上にならないと思うんですよね。それでは、全国に通用しないんです。

『全国日産サービス技術大会』は、全国の販売会社の中でも、地区予選を勝ち進み、選抜されたサービススタッフが日ごろの成果を競い合う大会

その人に合わせた教育をしていると、言葉にはならない、それぞれの磨けば光る部分というのがなんとなくわかるんですよ。技術大会の選手を選ぶときは、さらに隠れた"光るもの"を探し当てます。
2007年のブロック大会では、店舗に埋もれていた整備士を抜擢しました。技術大会に出た後の彼はずいぶんと変わりましたね。2011年の大会ではチームの育成を手伝ってくれるまでに成長しました。出場する選手たちに、自分のときにはうまくいかなかったことを積極的に伝え、指導してくれました。そして準優勝が決まったときは、自分のことのように喜んでいましたね。
技術大会に出場する選手には、会社が持っている知識や技術を集結して伝えるので、自信がつくんですね。大会終了後の選手はお店の期待にこたえようとするので、日々の仕事にも変化が出る。そうするとどんどん伸びていくんですね。技術大会って本当にすごいんですよ」

メダルに込められた思い

1つのメダルを見せてもらった。1996年全国日産サービス技術大会4位。これを大事そうに眺める一田さんは言う。若い整備士たちを育てるパワーと熱い思いはここから生まれていると。

「入社して6年目のときに、私が出場して勝ち取ったメダルです。それまで社内で入賞した人がいなかったので、ものすごく喜んでもらえました。そのときの上司が、『このメダルは青銅だから、磨けば光るんだよ。これから磨いていけ』と言ってくれて。それがあるから、技術大会に挑む選手を教えるパワーが出るんです。教え子である彼らの方がもっとキラキラしたメダルを持って帰ってくるので、それも嬉しいんですけれどね。でも、私にはこの青銅のメダルが似合っているんです。

技術大会に出たときの感動は忘れられないものです。帰ってきた選手たちは『感動しました』って、必ず言いますね。トレーニングを受けているときはつらいかもしれません。でも、メダルを手にした瞬間に報われる。この達成感は普段の生活では味わえない。いい機会だと思います。
常に目標を持って仕事をやっていれば、必ず結果が出ます。全員がそれぞれの目標を持って進む、そういうのを目指したいですね。私の目標は、次の技術大会でチームに金のメダルを獲得させることです」

整備士たちに伝えたい技術

後輩たちの指導に携わる一田さんは難解不具合の修理請負人でもある。店舗支援の一環で、連絡が入ればすぐに出動する。

「店舗支援にもやりがいを感じます。お店から電話があれば急いでかけつけます。何の情報もない中、クルマで店舗に向かう間に、あれかな、これかな、と考えるんです。到着して、もし手も足も出なかったらどうしようという不安もありますが、いざクルマに向かえば、不安よりも直してやろうという気持ちが先に立ちます。多くの可能性を考えた分、直ったときは嬉しいです。整備士だけが感じられる快感があるんですよ。

ただ、不具合というのは、クルマを修理するだけではありません。お客さまの心配も解消する気持ちで対応しないといけない。お客さまが安心して乗れるようになって初めて、修理が完了したって言えるんです。もし、整備後もお客さまが心配しているとしたら、その修理はまだ終わっていないんです。こういったことも、今後、整備士に伝えていきたいと思っています」

一田さんは、整備士たちが伸びるタイミングを逃したくないと語る。常にいろんな人に目を光らせ、彼らが前向きに取組み、結果の出やすいときを探している。そして多くの整備士がいる中、個々にあったやり方で指導していく。周囲に噂される鬼トレーナーは、自分に厳しく、後輩をあたたかく見守る人だ。

店舗の支援をしながら、私の持っている経験や勘など、技術を超えた部分もお店に伝えています。日々の鍛錬や技術大会によって進化し続ける整備士たちが、皆さまの愛車を守ります。