INSIDE-01 R390GT1Logo ISSUED :1997.5.28
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REVICED:1997.5.31
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[ INSIDE OF R390 ]
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R390設計のコンセプト
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R390 A  R390GT1は日産と、イギリスはTWR(社長:トム・ウォーキンショー)との共同開発車である。
 車両の設計にはレーシングカー・デザイナーとして数多くの名車を開発した実績を持つトニーサウスゲートが参画している。彼はかって日産がルマンを勝ちにいった1990年、日産のR90CPをねじ伏せて勝利したシルクカットジャガーの設計者でもある。昨年はフェラーリ333SPのエアロダイナミクスを手直ししたりと、ルマンとは絶えず関係が深い。

 R390GT1の設計コンセプトを語る上で「空力」は最も重要なテーマである。96年のルマンの覇者ヨースト・ポルシェは積極的にダウンフォースを発生させるコンセプトをとっていた。マクラーレンは今年のモデルでは、それにならって前後のオーバーハングを大幅に延長してきている。一方、R390GT1は前記の2車とほぼ同一のディメンジョンながら、オーバーハングは短く取り、ダウンフォースの発生を抑えている。

 「ダウンフォースとドラッグのバランスに対する各チームの考え方は色々ありますが、ルマンでは余りダウンフォースを増やしても逆効果になると考えています。ダウンフォースが強すぎるとストレートスピードが伸び悩むことになるはずです。」スポーツ車両開発センター部長、萩原の言葉である。
 「R390GT1では低ドラッグを狙っており、その分ダウンフォースを幾分弱めています。低ダウンフォース仕様は確かにコーナリングスピードで不利な面がありますが、その分サスペンションのジオメトリーを最適化するなどしてメカニカルグリップを上げて対応しています。」

R390 A  えて、R390GT1は1000kgとライバルに比べ軽く仕上がっている。車重が軽いということはコーナリングで有利なのである。「ストレートでは、いくら低ドラッグ仕様でも圧倒的に速いわけではありません。車重に合わせてより小さい口径のエアリストリクターが義務づけられるためで、パワーのあるライバルと比べても圧倒的なアドバンテージにはなりません。しかし、その分インフィールドセクションで挽回できるので、トータルとしてのラップタイムはかなりいい線までいくことができました。」

 こまで、R390GT1の速さについて説明をしてきた萩原であるが、最後に次のように語った。「R390GT1はシンプルな構造による高い作業性を実現しています。ルマンではブレーキが酷使されるため交換が必要になることがありますが、おそらくこの手のクルマとしては交換時間が最短の部類に入ると思います。また、サスペンションもボディパネルさえ外せば簡単に修理・調整できるようになっています。」

 に速いだけでは24時間の長帳場は勝てない。ピットインの時間をいかに短くするか、R390GT1はこういった点についてもおこたりないのである。