S31

Z-T登場
初期型Z 熟成期を迎える


S31
76年1月。フェアレディZは51年排出ガス規制をクリアしたモデルを投入。段階的に厳しくなる排出ガス規制に対応をすると同時に、装備を充実させたZ-Tをラインナップに加えている。
外観で最も大きな識別点は、76年モデルから採用されたタルボ型ミラーだ。メッキのボディーに大型化された鏡面をもつこのミラーは、リモコンミラー用のモーター類の内蔵も可能としているのが特徴だ。これと同時に、従来の砲弾型ミラーはZのフェンダー上から姿を消している。またZ-T、Z-L はファイナルレシオの変更を受けている。

トップモデルとして登場したZ-TにはZ-Lをさらに上回る各種の装備が与えられていた。5.5J14のアルミホイール、195/70HR14ラジアルタイヤ、FM/AMマルチラジオ付きカセットステレオ、パワーウインドウ、リモコンミラー、マップランプに加えたスポットランプ・・・。
また、2by2と2シーターの住み分けもなされている。2by2Z-T、2by2Z-Lに採用された起毛トリコットのシート表皮は上質な感じを与え、2シーターにはZ-T、Z-L、Zともに共通のニットレザーを用いて、よりサポート重視のディテールをシートバックに見せていたことも、キャラクターに変化を付けられていたことも見逃すことが出来ない事実だ。
フェアレディZという存在がもつ走りへのイメージ。それに加えて、すでにデビュー7年目をむかえ、支持層の年齢的な成長とともに多様化する要求をパッケージ搭載するために様々なアプローチがされていたわけである。

例えば深いナセルに沈んだ速度、そして回転計。そして3連メーター。その一番左に位置する時計にもZらしさを感じることができる。水晶発振のムーブメントが与えられたアナログクロック。それは自動車用としては珍しく秒針をもつ3針式をとる。さらにカレンダーまで備えるという拘りようだ。
その盤面は、まるで当時のラリーやサーキットで活躍したストップウオッチを思わせる。それは時間を告げるだけの単調な機能に没することなく、Zとの生活を楽しむドライバーのために欠くことの出来ない「空気」をつくり出していた。

S31
規制を受けたエンジンは一時的に「らしさ」を前面に打ち出す事を止めるが、こうした部分にはフェアレディZイズムが貫かれ、7年というモデルライフ、という言葉すら感じさせない熟成ぶりをみせるのである。
こうして振り返ると、このマイナーチェンジの方向性が時期Z、あるいは、Z32にいたり現代までのフェアレディZへと続くひとつのターニングポイントだったように感じるのは筆者だけだろうか。

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